たかが9枚されど9枚…労使協定も含めうっかりミスにご注意
【労働者派遣事業報告書の提出受付が始まっています】
労働者派遣事業を営まれている皆さん、年に一度の事業報告書提出の6月がやってきました。
期日厳守はもちろん、報告書とそれから労使協定方式採用の場合は添付する労使協定の内容チェックも万全に!
この事業報告書や労使協定は、窓口の労働局はもちろん、厚生労働省へ提出する結構重要な書類です。
正副の2部提出するのは、厚生労働省用と労働局用で、其々でしっかり内容の確認があるんですね。
今回は、この「事業報告書」がなぜそんなに大切と言われているのか、そして、うっかりミスを防いでスムーズに提出するためのポイントをお伝えしたいと思います。
なぜ、この報告書が「超重要」なの?
「また書類提出か…」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、この事業報告書、実はただの行政手続きではないのです。
労働者派遣の事業は、「多くの働く人々の生活やキャリアの構築」に直接関わる、かなり公共性の高い事業と位置付けられていて、だからこそ厚生労働大臣に許可された事業所だけが行うことができるんですね。国は皆さんの事業が適正に運営されているか、派遣労働者が安心して働ける環境が整っているかを、この報告書を通じても定期的に確認しています。
「賃金や派遣料金、それからマージンの設定は適当か」、派遣労働者に対し「安定した雇用を守るような取り組み」や「キャリアアップできる訓練」や「希望のヒヤリング」や「必要な情報を共有」等を実施できているか、「派遣禁止業務に就かせていないか」「まさかの偽装請負はないか」「専ら派遣ではないか」
といったようなことを報告書は各項目で問うています。そのような主旨の報告書なので法改正があったり時事の影響などで様式も定期的にバージョンアップされています。
このような報告書の主旨を踏まえて、少しだけ注意深く正しく実態を記入することで、後日労働局から確認連絡や指導を受けることが回避できれば良いですね。
派遣労働者を初心者レベルから育成し働きがいを感じてもらおうとしっかり訓練を実施していたり、適切な雇用管理に取り組まれているにもかかわらず、些細な記載漏れや、計上ミスにより数字の整合性がなくなってしまったり、選択項目を誤ったりというケースがよく見受けられますのでご注意くださいね。
月末までまだ時間がある? 締切は厳守! 1日でも過ぎると指導を受けることも
日々の業務に追われつい後回しにしがちな役所がらみの書類ですが、できれば早い目に終わらせましょう。
年間の実績の集計などで思いのほか手間がかかるのと、最初にも書きましたが、添付する労使協定のチェックも怠ることができません。場合によっては、労使協定の再締結が必要となり時間を要することがあるかもしれません。
期日までの提出が法律で定められているため、1日過ぎてしまったことが法律違反と判断され、後日指導文書が届いたというケースもあります。
そうなると事業の信頼性に関わるだけでなく、余計な時間や労力を使うことにもなりかねません。
月末の窓口は相当込み、待ち時間ももったいないので、早い目に郵送してしまうことをお勧めします。
スムーズに提出するためのチェックリスト
「じゃあ、何に気を付ければいいの?」と思われた方に、いくつかポイントをお伝えしたいと思います。
許可のある事業所はすべて提出が必要です!
実績がなくても、許可がある限り報告書の提出が必要です。
特に設立したばかりの派遣会社さんの提出漏れが多いのでご注意ください。
「最新の様式」を使いましょう。
古い様式だと受理されないので必ず最新の様式を使用しましょう。
過去提出分を参考にするのは効率的で良いと思うのですが、2,3年前の報告書を上書きして使われる方がいらっしゃいます。しかし昨年様式が少ーしだけ変更になっているので、気を付けてくださいね。
「添付書類の労使協定」も万全に
労使協定の有効期間、職種、賃金額あたりの確認、参照する就業規則の該当箇所等の添付忘れも要注意です。
労使協定に「評価制度については就業規則の第46条による」等の表記をされている場合、就業規則の該当箇所のコピーもセットで労使協定が完成しますので添付がないと労使協定の必要事項漏れと判断されることがあります。
事業報告書の内容は2部構成になっている!?
報告書は9ページあり、少しわかりにくいですが2部構成になっています。
- 前半6ページまでは、前年度(事業所決算年度の直近1年間分)の実績を記載します。
・2ページ目上部の派遣労働者人数は年度末時点の派遣労働者数を記入します。
・契約件数は、年度中に締結した派遣契約期間ごとの契約書の枚数をカウントします。
・雇用安定措置の対象者には、年度中に退職した派遣労働者も含めてカウントします
(無期雇用の派遣労働者は対象外)。
・3ページからの年度間の賃金には、給与、交通費、賞与、賃金・労働時間には有休も含みます。
・5ページのマージン率の情報提供方法の記入も忘れないように。
・6ページもすべて重要です。記載漏れやカウントミスに注意しましょう。
これらは許可の申請・更新手続きで設定した計画に沿って実施できているか確認すると良いですね。
- 7ページ以降は、今年の6月2日現在の状況を記載します。
6月2日現在の派遣労働者数は、6月2日に契約している派遣労働者ではなく(!)、
6月2日に実際に就業した派遣労働者数をカウントします。
(今年は6月1日が日曜日であったため翌日2日現在の報告とされているのはそのためです。)
・最後の最後、9ページの一番下の記載漏れや数字の整合性もしっかり確認して完了です!
「マージン率等の情報提供」も忘れず更新しましょう
5ページのところで説明した情報提供方法の情報提供についてです。
厚生労働省の「人材サービス総合サイト」か自社HPにアップしている情報を最新のものに更新しましょう。
この最新情報の提供は法律で義務づけられていますので、更新しないまま放置していると、違反状態を公開していることになってしまいます。事業報告書のために集計を完成したタイミングで忘れずに更新するのがベストです。
派遣事業全般のサポートしています
事業報告書の提出のポイントをまとめてみましたが、いかがでしたか。
「作成してみたけれどよく分からないところがある」
「労使協定の内容に不安がある」
「前任者が退職し派遣の制度自体がよく分からない」
このようなお悩みに、派遣事業に特化した社労士が柔軟に対応しております。
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