実務ナビ(派遣期間と抵触日)

カレンダー
目次

派遣労働者の派遣期間と抵触日について

派遣会社(派遣元)にとって、派遣労働者の「派遣期間」を適切に管理することは、コンプライアンスだけでなく、企業の信頼性向上にもつながる重要な業務です。特に「抵触日(ていしょくび)」については、適切な管理を怠ると、法律違反やトラブルの原因となる可能性もあります。

 今回は派遣期間の基本と「抵触日」の概念、管理方法について分かりやすく解説します。派遣先企業との適切な連携を図り、派遣労働者が安心して働ける環境を整えましょう。

1. 抵触日とは?

「抵触日」とは、法律で定められた派遣期間の上限に達する日を指します。派遣労働には期間制限があり、原則、その期間を超えて労働者を派遣することはできません。

抵触日には、2種類ありそれぞれルールが異なる

  • 事業所単位の抵触日
  • 組織単位(個人単位)の抵触日

2. 事業所単位の抵触日

 これは、同じ派遣先事業所で就業するすべての派遣労働者に共通で適用される抵触日を指します。派遣先事業所は初めて派遣労働者を受け入れた日から3年間までしか派遣労働者を受け入れることはできず、3年が経過するとそれ以降は、派遣労働者を受け入れられなくなるというルールです。

  • 派遣労働者単位ではなく、派遣先事業所全体の派遣受入れ可能期間
  • その派遣労働者受入れ期間を派遣会社へ通知する義務がある
  • 派遣先において法定手続きを行うことにより、3年経過後も延長することが可能
  • 同じ派遣先事業所においての抵触日は基本一つだけである

 例1.)株式会社○○が初めて派遣社員のA子さん(派遣会社■■所属)を2000年4月1日に受け入れた場合

 株式会社○○の事業所単位の抵触日:2003年4月1日、A子さんは2023年の3月31日まで就業が可能

 例2.)同じ株式会社○○が、2001年4月1日に派遣労働者B男さん(派遣会社▲▲所属)も受け入れた場合

 事業所単位の抵触日は共通なので、2003年4月1日、B男さんは最大2年間就業が可能

管理方法:

  • 派遣先から抵触日通知書を受け、抵触日を把握する。
  • 派遣開始に際しては、派遣労働者に対してもあらかじめ書面で通知する。
  • 派遣元管理台帳に記載し継続的に管理する。
  • 派遣先と連携し、期間の延長があった場合には書面により通知を受ける。

3. 組織単位(個人単位ともいう)の抵触日

これは、同じ派遣労働者同じ組織(課や部など)に派遣できる期間の上限を3年間とするルールです。

  • 個々の派遣労働者を同じ部署で、派遣就業させることが可能な期間
  • 事業所単位の抵触日と異なり、延長をすることは不可能
  • 派遣可能期間は、派遣先の部署が変わればリセットされる
    (例:総務課から営業課)
  • 抵触日は、派遣労働者ごとに設定される

管理方法:

  • 派遣個別契約書や就業条件明示書に、開始日・期間・抵触日を明記し派遣元・派遣先・労働者と共有する。
  • 定期的に派遣期間をチェックし、満了前に対応策を講じる。
  • 派遣先とも協力し、期間満了後の選択肢(直接雇用の打診や別部署への派遣)を早めに検討する。

4. 抵触日通知書の義務と管理

派遣元企業には、派遣先から事業所単位の「抵触日通知書」を受け取る義務があります。これは、派遣先が通知しなければならない重要な書類です。

  • 事業所単位の抵触日 → 派遣先が派遣労働者を初めて受け入れた日からカウント
    「抵触日通知書」派遣契約(個別契約書)の締結前、又は契約更新前
     派遣先から受ける
  • 組織単位(個人単位)の抵触日 → 派遣労働者が派遣される日からカウントする

5. 派遣期間の制限を受けない労働者

派遣労働には、原則として 「事業所単位で3年」「個人単位で3年」 の期間制限がありますが、以下の 特定の労働者 はこの制限の対象外となります。

1. 派遣元企業の無期雇用労働者

(無期雇用派遣)
派遣元と無期雇用契約を結んでいる労働者 は、派遣期間の制限を受けません。
(例)派遣元の正社員として雇用され、派遣される労働者

2. 60歳以上の派遣労働者

60歳以上の労働者 は、キャリア継続の観点から派遣期間の制限が適用されません。

3. 「終期が明確な」業務に従事する労働者

➡ 期間の定めがある プロジェクトや期間限定の仕事 には派遣期間の制限が適用されません。
(例)建設工事のプロジェクト、イベント運営、育休・産休代替

4. 日数が限定されている「日雇派遣」

30日以内の短期派遣 も派遣期間の制限を受けません。
ただし、日雇派遣ができるのは以下のいずれかの人に限られます。
✔ 60歳以上
✔ 雇用保険の適用を受けない学生
✔ 年収500万円以上の副業従事者
✔ 世帯収入500万円以上の主たる生計者ではない人

6. 派遣期間を守る意義と企業の取り組みの重要性

派遣期間の制限は、単に法律で定められたルールではなく、派遣労働者のキャリア形成を支援するための仕組みとして設けられています。長期間、同じ職場で派遣労働を続けることで 「常用代替」(企業が正社員を雇わず、派遣社員を長期的に使い続けること)が進み、派遣労働者が安定した雇用やスキル向上の機会を得にくくなる恐れがあります。そのため、一定期間を超えて同じ職場で働き続ける場合には、派遣先による直接雇用の検討や、派遣元によるキャリア支援が求められています。

 また、派遣労働者自身にとっても、スキルアップや多様な経験を積むことで 雇用の安定性を高め、将来的なキャリアの選択肢を広げる ことができます。

派遣元企業ができる取り組み

  • 派遣期間の管理を徹底し、抵触日前に適切な対応を行う。
  • キャリアアップ研修やスキル習得支援を充実させ、派遣労働者の成長をサポートする。
  • 派遣先と連携し、直接雇用の可能性や配置転換の選択肢を積極的に提案する。

 派遣労働者が 単なる「労働力」ではなく、将来を見据えて成長できる働き方 を実現するために、派遣元・派遣先が協力し、適切な管理と支援を行うことが求められています。適正な派遣期間の運用と、キャリアアップ支援の両輪で、より良い派遣雇用環境を築いていきましょう!

出展「派遣先の皆様へ」厚生労働省

   「派遣労働者を受け入れるためには必要な対応があります!改めてご確認を

目次